「ビーツ」という野菜をご存知でしょうか。カナダをはじめ、ヨーロッパやアメリカ大陸では比較的ポピュラーな野菜で、私が住んでいるエリアでは秋から旬を迎えます。
日本ではまだまだマイナーな野菜なので、「知らない、聞いたことない・・・」という人も多いかもしれません。
でも、ビーツは知らなくても、もしかするとロシアの代表的な料理「ボルシチ」を食べたことがあるかもしれませんね。実は、ボルシチの鮮やかな深紅色は、着色されたものではなくビーツの自然な色なのです。
そんな鮮やかな色が特徴のビーツは含まれる豊富な栄養から「奇跡の野菜」とか「飲む輸血」ともいわれ、海外ではスーパーフードとして一般に食べられています。
今回は、ビーツの食べ方や健康・美容効果についてまとめました。
ビーツとはどんな野菜?
ビーツは見た目が「赤カブ」のような形状をしていますが、カブの仲間ではなくホウレン草の仲間。輪切りにすると同心円状に赤い輪になっているのが特徴です。
原産は地中海沿岸ともいわれ、砂糖の材料に使用されるサトウダイコン(甜菜)の仲間で、糖分を多く含むため独特の甘味があります。
ビーツは最近日本に入ってきたと思われがちですが、実は江戸時代初期には日本に持ち込まれていて和名は「火焔菜(カエンサイ)」と呼ばれています。
ビーツといえば鮮やかな深紅色のイメージが強いですが、ビーツには赤色種と白や黄色の種があります。ただ、日本で主に栽培されているのは赤色種のようです。
ビーツの健康・美容効果
注目の成分「NO(エヌオー)」
ビーツで最も注目されるのは、豊富に含まれる「硝酸塩」を摂取することによって体内で生成される、一酸化窒素「NO(エヌオー)」です。一酸化窒素「NO(エヌオー)」は、体内で血管を柔らかくして血液の流れを良くするはたらきがあることが発見され、ノーベル生理学・医学賞を受賞しています。
このようにビーツを食べることによって体内で一酸化窒素「NO(エヌオー)」が生成されることで血管が柔らかくなると、血管の中に血栓ができることを防いで動脈硬化を予防する効果が期待できます。
さらに血流が改善されて血圧を下げる効果、疲労回復や持久力アップ効果、基礎代謝の向上によるダイエット効果、免疫の向上効果など多くの健康・美容効果が期待できます。
整腸作用・便秘解消効果
ビーツには食物繊維に加えて天然のオリゴ糖「ラフィノース」が豊富に含まれています。
食物繊維もオリゴ糖も腸内で善玉菌のエサとなり、腸内環境を整える整腸作用や便秘解消効果が期待できます。
こうして腸内環境が整うことによって、中性脂肪を低下させる効果や血糖値を抑制することができるだけでなく、老廃物の排出効果で肌荒れの予防効果も期待できます。
高い抗酸化作用
ビーツの鮮やかな深紅色をもとになっているのは、ブルーベリーなどに含まれる「アントシアニン」ではなく、ポリフェノールの一種で「ベタシアニン」と呼ばれる成分です。
ベタシアニンは、数あるポリフェノールの中でもトップクラスの強力な抗酸化作用があるといわれています。ベタシアニンの強い抗酸化作用は、血液をサラサラにするだけでなく、動脈硬化などの生活習慣病やガンの予防にもなるともいわれています。
さらに、ビーツには抗酸化作用が高いビタミンAやC、Eといった栄養素も含まれているため、ベタシアニンとの相乗効果で高い抗酸化作用から肌のアンチエイジングにも効果が期待できますよ。
貧血予防効果
ビーツが「飲む輸血」と呼ばれているわけは、ビーツに鉄分や葉酸が豊富に含まれているから。
女性に多い貧血は、血液中のヘモグロビンを作る材料である鉄分が不足して体内の組織に必要な酸素が不足しがちになるからです。ビーツには野菜の中でも豊富な鉄分が含まれるため貧血の女性にうれしい野菜です。
さらにビーツには赤血球を作りだすために必要な「葉酸」も豊富に含まれています。ビーツは鉄分と葉酸のW効果で貧血予防に役立ってくれるのです。
ビーツの食べ方基本
見た目は赤カブに似ているビーツですが、実際はとても硬いので、基本的には柔らかくなるまで下茹でしてから調理します。
サラダなどに使う場合には皮をむいて薄くスライスして食べることもできます。
ここでは下ごしらえとして皮付きのまま柔らかく茹でる方法をご紹介します。
ビーツの下ごしらえと茹で方
葉が付いた状態のビーツを購入したなら葉を切り落とし、根の部分を使用します。(葉の部分にも栄養が豊富に含まれているので捨てずに炒め物や和え物などにしていただきましょう)
- 葉を切り落としたビーツは皮をむかずによく洗っておきます。(皮をむいてしまうと色が薄くなってしまいます)
- 鍋に水を張り、塩(小さじ1/2くらい)とお酢(大さじ1~2)を加えてビーツを入れ20~60分ほど茹でます。
- 茹で時間の目安は竹串で刺してみて少し硬いくらいで火を止めること。ビーツは取り出さずに茹で汁のまま冷まします。
- 手で触れるくらいに冷めたら取り出して皮をむきましょう。
皮付きのまま焼いてもO.K!
ビーツのもう一つの下ごしらえの方法としては、よく洗ったビーツに皮付きのまま軽く塩を振ってアルミホイルに包んでオーブンで焼く方法。
180℃に熱したオーブンで30分ほど加熱します。皮をむいて下ごしらえ完了。
保存方法
生のままのビーツ(根の部分)は、根菜と同じように冷蔵庫で1週間くらいは保存することができます。
冷蔵庫で保存する時には、濡れた新聞紙などに包みビニール袋に入れて保存します。ちなみに葉の部分は2~3日以内に使い切りましょう。
ビーツを生のまま冷凍すると食感が悪くなるのでおすすめできません。
冷凍保存するなら下茹でしたものを丸ごと、またはカットして冷凍保存袋に入れて空気を抜いて冷凍保存しましょう。
ビーツを使った代表的調理法
ボルシチ
「ボルシチ」は、ウクライナの伝統料理でロシアをはじめ東欧諸国で広く知られる煮込み料理のひとつ。牛肉や豚肉などの肉と一緒にタマネギ・ニンジン・キャベツ・ジャガイモなどの野菜とビーツをブイヨンで煮込んだものです。これにサワークリームを添えていただきます。使用する肉や野菜に決まりはないのですが、ポイントはビーツを入れること!
ロシアやウクライナをはじめ寒い地方ではビーツのやさしい甘みがエネルギーになりカラダを温める効果があります。
ヴィネグレット・サラダ
ロシアではビーツを使った「ヴィネグレット・サラダ」が有名です。
下茹でしたビーツ・茹でたジャガイモとニンジンは1センチ角にカット、みじん切りにして塩もみしたタマネギ、みじん切りにしたピクルスをすべてボウルに入れてオリーブオイルと塩で味付けします。とても色がキレイで日持ちがするロシア伝統のサラダ。
ポタージュ
スライスしたタマネギをバターで炒め、茹でて下処理したビーツ・水・牛乳・塩コショウを加えて沸騰直前まで温めたら、粗熱を取ってミキサーかブレンダーでポタージュに仕上げます。
温かいままでも、冷やして冷たくしても美味しくいただけます。ビーツの赤色と牛乳の白が混ざり合ってとてもキレイなピンク色のポタージュになりますよ。
ビーツのオーブン焼き
ビーツをよく洗い皮をむかずにアルミホイルに包みます。これを180℃のオーブンで40~60分蒸し焼きにしましょう。
ほどよく焼けたら粗熱を取って皮をむきスライスして塩少々ふりかけ、オリーブオイルをかけていただきます。お好みでバルサミコ酢をかけてもGood!
ビーツのサラダ
ビーツは生のまま皮をむいて薄くスライスしてもいいのですが、おすすめは下茹でしたビーツを使用したサラダ。
フリルレタスやベビーリーフなどをお皿に盛り、食べやすくカットしたビーツとサイコロ状にカットしたフェタチーズを上に乗せます。最後にクルミを散らし塩コショウ、レモン汁、オリーブオイルで味を整えたら完成。
ビーツを食べてはいけない人って?食べ過ぎによる副作用
ビーツは「飲む輸血」と呼ばれるだけあって、多くの栄養素を含み様々な健康・美容効果が期待されています。しかし、すべての人に効果が表れるわけではありません。
ビーツは食品なので“副作用”はないのですが、いくつか注意点があるのでご紹介します。
1.お腹が緩くなることがある
ビーツには天然のオリゴ糖ラフィノースや食物繊維が豊富に含まれるため、食べ過ぎるとお腹が緩くなる可能性があります。
2.腎臓に問題がある人は注意!
ビーツにはシュウ酸塩が多く含まれているとされているので、腎臓に問題がある人・これまでに腎臓結石の経歴がある人はビーツを控えたほうがいいといわれています。
3.排せつ物が赤くなることもあるが…
ビーツの赤い色素成分ベタシアニンのせいで、たくさん食べると尿が赤くなる(ビーツ尿)可能性があります。これは、ビタミンB2などが含まれたビタミン剤を飲んだ後に尿が黄色くなるのと同じような現象で、健康に影響はありません。
4.アレルギー症状の可能性
何らかのアレルギー体質の人の場合、皮膚アレルギーが起こる可能性が指摘されています。万が一アレルギー反応が出た場合は、ビーツを食べるのは避けましょう。
ビーツの摂取量目安
ビーツの素晴らしい健康効果から近年ではビーツの粉末やサプリメントなども開発されています。ただ、どれほどカラダにいいとされる食品でも過剰摂取は栄養のバランスを崩すことになり、かえって害になることがあります。
厳密に1日に何グラム以内・・・と決められているわけではありませんが、毎日ビーツばかり食べ続けるような極端なことは避けたほうがいいですよ。
ただ、日本の農林水産省では健康被害の証拠はないとして規制を設けていません。
ビーツは“ボルシチ”だけではなかった!
今回は、「奇跡の野菜」、「飲む輸血」として近年話題のビーツの食べ方や健康・美容効果についてまとめました。
これまでは、ビーツといえばロシア料理のボルシチに入っている野菜というくらいしか知らなかったかもしれませんが、実は血管系の健康に重要なはたらきがある物質「NO(エヌオー)」を含め強力なポリフェノール「ベタシアニン」、オリゴ糖やビタミン・ミネラルなど、まさに“スーパーフード”と呼ぶにふさわしい豊富な栄養素が含まれる野菜だということが分かりました!
ガンをはじめ、生活習慣病予防・アンチエイジング効果が得られるビーツ、ぜひ食卓に取り入れていきたいですね。
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